©1995 SILKY'S
恋姫 〜Mystic Princess〜 (シルキーズ)・1995年05月26日 PC-9801用 3.5インチFD版 5インチFD版
・****年**月**日 DOS/V用 3.5インチFD版
90年代中頃の作品で、のどかな田舎を舞台に幼馴染の少女達との邂逅を描くアダルトアドベンチャー。
主人公「小十郎(名前変更可)」はスケベでお調子者、優柔不断な学生である。夏休みを利用し、十数年ぶりに故郷の田舎に帰ってきた小十郎は、美しい4人の女の子と出会い、知り合いになろうと積極的に声をかけていくが、どうも様子がおかしい。どうやら彼女たちは小十郎のことをよく知っているようだが、小十郎にはそんな記憶が一切ないのだ。しかも全員が小十郎に恋焦がれており、やがてそれぞれのやり方で誘惑のアプローチをかけてくる。小十郎は疑問を抱えつつ、彼女たちの切実な思いに応えていく。
システムは移動先に自由があるタイプのADVで、操作はコマンド探索と選択肢の混合型である。普段は「見る」「話す」「移動」などのコマンドを総当りすることで場面が進展し、要所では選択肢によりヒロインを抱くか、未遂に終わるかに分かれていく。一見すると、ラスト付近でセックス済みのヒロイン一人を選択して個別エンド、という当時のADVの一般的な作りだが、難しい条件を整えることで隠されたルートが開け、物語の核心に迫っていくという、奥行きのある作りとなっていた。エンディングはグッド、バッド合わせて14種類である。
シナリオはドジで調子のいい性格の主人公が、温泉で背中を流してもらったり、怪我の介抱をしてもらったり、意識不明の相手にイタズラしたりしながらドキドキな体験を重ね、やがて男女の仲へ発展していく流れである。ヒロイン同士の対抗心、嫉妬が顕著なのが特徴的で、主人公はボコボコにされたり、泣かれたり、脅迫されたりしながら、頑なに優柔不断を貫くコミカルな作風となっていた。
和風感が強調されているのも特徴的で、テキストは縦書き、セーブ・ロード番号やエンディング番号も漢数字と徹底している。また、相手のメッセージが吹き出しのように小ウィンドウで表示される点も変わっている。
Hシーンは一人当たり2箇所で、アダルト要素にはさほど比重はない。ヒロインは乱暴で素直になりきれない巫女、主人公を兄と慕うロリっ子、家庭的な商店主、おしとやかで病弱な女の子の4名である。
後にWindowsに移植された際は、ブランドは母体のエルフに変更になり、『恋姫 K・O・I・H・I・M・E』として原画レベルでフルリメイクされた。派生作品にOVA版がある他、90年代のアダルトゲーム出身作品としては珍しく、『CR恋姫』としてパチンコ台が稼動している。
個人的な印象として、ここまで季節感と和風を前面に出した作品は、当時としては珍しいのではないか。2段階のクライマックスで奥行きとドラマ性をもたせた所も印象的だった。難点としては、ビジュアルのタッチやクオリティが安定しないのが気になる。主人公の軽惚な言動も好みが分かれそうだ。