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Emmy (ASCII/工画堂)・1984年06月**日 PC-8001/8801用 5インチFD版
パソコンゲーム黎明期の作品で、学習機能をもった人工知能との会話を目指した意欲作。その迷走ぶりとゲーム画面のインパクトから高い知名度を誇る。
シナリオ等は存在しない。プレイヤーはエミーと名乗る模擬人格の女性に、「キミ ノ ヒトミ ハ キレイ ダヨ」といった風に、チャットの様にコマンド入力で話しかけ、その反応を楽しみ、彼女の心を掴むべく口説き文句を考えていく流れである。Emmyの好感度が高まれば背景が華やかになっていき、最終的に全裸を披露してくれるという、脱衣ゲーム要素も持っていた。
実際には人工知能と呼ぶには程遠く、新しい単語を認識した場合は一旦聞き返してくるものの、以後は誤魔化しばかりで学習能力には期待できない。また、日常レベルの単語で話しかけても、「ウッソー」「チョット マッテョ」「ヤッダー」といった数十の応答パターンの中から、ランダムで相槌を打つという適当ぶりで、自然な会話が成立するほうが珍しい。
従って攻略を目指す場合は、「キミ ハ キレイ」といった正解の文章を探すだけの作業となり、当時の一般的なアドベンチャーゲームと大差がない。8ビットCPUという時代を考慮すれば致し方ないが、人工知能の育成や自然なコミュニケーションを想像した無垢な購入者にとって、相当なギャップだったのではないだろうか。
元々グラフィック機能に劣るハードPC-8001で開発された為か、ドットは粗く、色数の少なさが目立ってしまっている。また、脱衣シーンは一枚のみで、アダルト要素には比重が置かれていない。同年に続編の『Emmy2』がFM-7対応ソフトとして発売されている。これは後にMSX2用として実写取り込みでリメイクされたが、その際は脱衣要素のない一般ゲームとなっている。
後に「人工無脳」に分類され、ポンコツぶりを揶揄された本作だが、着想は面白く、家庭用ゲームのヒット作『シーマン』(1999年)に通じるものがある。また、無個性のAIを恋愛対象に見立てて育成するという考え方は、3DCGゲーム『人工少女』(2004年)と共通している。家庭用端末で「人工知能」と自然な会話をする時代が来れば、遥かな先駆者として、本作品が顧みられることがあるかもしれない。