©1998 海月製作所
ラブ・エスカレーター (海月製作所)
・1998年04月17日 PC-9821用 3.5インチFD版 CD-ROM版
90年代後半の作品で、恋愛のステップアップを描いたアダルトADV。PC-9800シリーズ専用のゲームとしては最末期の作品で、そのクオリティとボリュームから「PC98最後のエロゲー」「PC98最後の大作」と呼ばれた。
(あらすじ) 主人公「たかし(名前変更可)」は平凡な学生である。親友の「脇谷」から恋の橋渡しを頼まれたたかしは、中学時代の知り合い「理恵」に声をかけることになった。ところが、理恵はたかしへの思いを抱いたままで、たかしは理恵が好きだったことを自覚してしまう。秘めていた恋心に火がついた二人は、脇谷には言い出せないまま逢瀬を重ね、関係は次第にエスカレートしていく。
ゲームシステムは基本的に、週末ごとにデートの相手と場所を選んでいくスケジュール管理型ADVである。期間はおよそ一年間で、メインヒロイン「理恵」の好感度を上げ、ハッピーエンドを迎えることが主なゲーム目的となる。サブヒロインとして年下、年上の女性も登場し、マルチエンドとなっていた。
一方、理恵とのセックスシーンはコマンド型の調教シュミレーションとなっている。デートの行き先としてラブホテル等を選んだ場合に発生し、「胸を愛撫する」「フェラチオさせる」「正常位」といったコマンドの中から任意のプレイを組み合わせ、理恵の限界を超えないようにフィニッシュしていく。回数を重ねることで理恵が大胆になったり、プレイのバリエーションが増えたり、耐久力が上がって多くのコマンドに耐えられるようになっていく。
アダルトシーンのほぼ全てが、ダイナミックで滑らかな動きのアニメーションになっている点も特徴である。カット数が60以上に及ぶ点からも、一流のアニメーションアダルトゲームに匹敵するといえるだろう。
ストーリーは主人公達が様々な障害にぶつかりつつ、一つ一つ乗り越えて交際を続けていく、ドラマチックでシリアスな青春物語である。脇役達の恋愛や失恋にも触れている辺り、青春群像劇の要素も備えているといっていいだろう。週末デートの過ごし方により、5種類のエンディングを迎える。
関連商品は原画集、サントラ、小説版など。後に『LOVERS 〜恋に落ちたら…〜』(2003年)としてリメイクされた。
当時、PCゲームのハードの主流はWindows95に移っており、PC98シリーズのみで発売される新作は稀有になっていた。「PC98最後の大作」というあだ名は、そんな状況で生まれたヒット作だったことに由来する。ただし、意図してPC98を選んだ訳ではなく、発売延期を繰り返した末の、やむを得ない事情があったようだ。
個人的な印象としては、ストーリー重視の作風でありながら、アダルト面でも最上級のクオリティとボリュームを求めた欲張りな大作である。良く言えば贅沢、悪く言うと凝り過ぎか。PC98全盛期に乗り遅れたものの、その熱量で何とか輝きを放った作品だった。