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千の刃濤、桃花染の皇姫 (オーガスト)・2016年09月23日 Windows用 DVD-ROM プレミアムパック版 初回限定版 通常版
・2016年12月29日 ダウンロード販売開始 【DMM】
10年代中頃の作品で、和風ファンタジー世界を舞台に忠義と愛を描く恋愛アドベンチャー。読み方は『せんのはとう、つきそめのこうき』。オーガストの12作目(ファンディスク含む)である。
パッケージ版の媒体はDVD-ROMだが、Android端末でもプレイできるDLコードが付属している。また、PC版もタブレット端末で快適にプレイできるように、デスクトップモードとタブレットモードの両方を備えており、いつでも切り替えられる仕様になっていた。
およそ二千年の歴史を誇り、神の血を引く皇帝によって治められてきた豊葦原瑞籬内皇国(とよあしはらのみずがきのうちのすめらみことのくに)、通称「皇国」。独特のテクノロジー「呪術」と、超人的な身体能力を持つ「武人」の力により、長く平和が保たれてきた皇国だったが、前触れもなく「共和国」の奇襲を受け、臣下の裏切りで皇帝は謀殺され、首都は陥落してしまう。そこから始まる共和国の横暴は、皇国人にとって耐え難いものだった。抵抗活動に身を投じながらも、守るべき主を失って鬱屈していた武人の主人公は、皇女を名乗る危うげな少女に出会い、協力と衝突の中で主従の絆を深め、本来の力を取り戻していく。
ゲームシステムは『穢翼のユースティア』(2011年)の流れを汲む特殊な分岐型のADVである。メインストーリーの各章がヒロインの個別パートの導入部分を兼ねており、各ヒロインとの個別エンドは本筋からドロップアウトしていく形を取っている。このため、それぞれのヒロインとのハッピーエンドを確保しつつ、核心部分となる物語の謎を最後まで楽しめる、メインシナリオ重視の作風となった。
世界観はファンタジーであり、慣習どおりのコミカルな学園物の要素も備えながら、歴史ドラマのような壮大な設定や、複数の勢力の謀略、騙し合いが入り乱れるスリリングな展開、凄惨で殺伐としたアクション要素を含んでいるのが特徴で、全体の印象はシリアスである。
主人公は真面目で堅物な好青年で、18禁ゲームには珍しくボイスが当てられている。戦争で記憶を失ってしまった彼は、表向きは学生、花屋の店員として暮らし、夜は地下組織の幹部として、女性の会長と共に武装蜂起の準備をしていく。その最中に復讐に燃える皇女や、呪術を司る巫女の長、偽の皇女に祭り上げられてしまった義妹と出会い、共和国軍の中で高位の女性から睨まれつつ、様々な事件に巻きこれていく流れとなっている。
ヒロインは上述の5人である。Hシーンは各ヒロイン1人につき本編中に1つしかないが、クリア後に「余談」としてショートエピソードが開放される仕組みで、その中に3つほどHシーンを含んでいるので、合計は1人あたり4つとなる。他にサブヒロインとして、同級生や協力者など3人とのエピソードが収録されている。
関連商品は、特別仕様のプレミアムパックに原画集、ドラマCD、抱き枕、絵馬が付属した他、各店舗ごとに抱き枕カバー、色紙、マウスパッド、タペストリー、タオル、テレカなどのオリジナル特典が用意されていた。また、本編の発売に先立ち、OP/ED曲のシングルや、校章、Tシャツなどが販売されている。
個人的な印象として、萌えコンテンツにありがちな稚気を感じる設定に目をつぶれば、シナリオが相変わらず充実しており、最期まで緊張感のある展開が嬉しい。和風感にこだわった美しい音楽やインターフェース、爆発や炎、剣戟などの迫力ある演出、詳細でシャープなタッチの背景美術も非常に印象的だった。機能面でも時代に合わせた配慮が行き届いており、まさにオーガストらしい、隙のない作風といえるだろう。
公式ページ
http://august-soft.com/hatou/index.html