©2016 Lose
まいてつ (Lose)・2016年03月25日 Windows用 DVD-ROM版
・2016年12月22日 Windows用 DVD-ROM リマスター版
・2016年12月22日 Windows用 DVD-ROM 『まいてつ&ものべの 仲良しセット リマスター版』
・2017年01月06日 ダウンロード版 配信開始 【DMM】
10年代中頃の作品で、鉄道経営と地域振興を通しての恋愛を描くアダルトアドベンチャー。公式のジャンル呼称はe-motionノベル。『ゴスデリ』『ものべの』に続くLoseの三作目。萌えゲーアワード2017において準大賞を受賞している。
「エアクラ」と呼ばれる新技術が交通に革命をもたらし、鉄道もガソリン車も衰退した架空の世界。主人公「双鉄」は穏やかながら、生真面目で色恋には鈍感な若者である。水の綺麗な地方都市、「御一夜(おひとよ)」に持ち上がったエアクラ工場の誘致を阻止するため、大学を休学して実家に帰郷した双鉄は、亡き祖父の部屋で長い眠りについていた人形「ハチロク」に出会う。彼女はレイルロオド…人のように感情を持ち、鉄道の運転や整備を助ける人型モジュールだという。ハチロクと共に御一夜市の寂れた現状を見て回り、鉄道の可能性に着目した双鉄は、実家の酒造元やうら若き市長、町の人々の助けを借り、工場誘致反対の旗印として、SLの復活事業を一から立ち上げていく。
ゲームシステムは選択肢分岐型のADVの一種だが、選択肢は一箇所だけで、鑑賞メインのシンプルな構造である。共通パートの後、ヒロイン個別ルートを三つの中から選んで鑑賞していくことになるが、達成率に応じてサブヒロインのルート等も開放されていく。
シナリオは、幼少時の事故で身寄りを失い、のどかな地方都市の裕福な家に引き取られて育った主人公が、水汚染の恐れがある工場誘致から地域を守るため、周囲の人々の協力を得ながら蒸気機関車を修復し、機関士として修練を積み、様々なトラブルを一つ一つ乗り越えていくロマンチックな展開である。鉄道関連のエピソードが多いのはもちろんだが、観光の活性化プランを練ったり、選挙活動を手伝ったりする中で、現実の地方行政や鉄道経営が抱える悩みに踏み込んでいくのが独特である。
メインヒロインは古風で真面目なSL専用のレイルロオド、絵が得意で主人公を敬愛する義理の妹、市長でありながら、鉄オタが高じて鉄道会社を所有する「まいてつ」となり、自ら運転士も務める美人クォーターの三人となっている。他に、酒造元で杜氏を務める義理の姉、敵対関係にある銀行の重役、川下りの運営に関わる少女達など、5人のサブヒロイン達にもエピソードが用意されている。
e-moteと呼ばれる、一枚絵を動かすタイプのアニメーションは、通常の作品ではHシーンでのみ用いられるが、本作品では日常風景の会話シーンや立ち絵一つ一つにまで施されており、口パク、まばたき、髪の揺れ、呼吸運動まで表現する凝った演出がとられている。
また、ノスタルジックな車両や、鉄道沿線の風景も見所の一つと言っていいだろう。音楽面では、ヒロインそれぞれにOP曲、ED曲など、合計12のボーカル曲が用意されていた。
Hシーンが本編中にないのも変わっていて、個別ルートをクリアすることで開放されていく。メインヒロイン一人あたりに4~5つ、サブヒロインに2つほどで、合計数は28と非常に多い。更にパッケージ版の予約特典として、7つの追加Hシーンを鑑賞できるパッチのダウンロードコードが付属した(後に有料で配信開始)。ブランドの伝統で、極端に未成熟な肉体描写になってるヒロインも何人か存在する。
2016年9月、熊本県人吉市などの出資で運営されている「くま川鉄道」にて販売が予定されていた、震災復興応援用の特別切符『くまてつ』のイラストが、特定の成人ゲームキャラに似ているとしてクレームが寄せられ、発売が中止されたとの報道があった。実際はLoseの善意による能動的な支援で、協議の上で『まいてつ』と直接結びつかないよう、微妙にデザインを変えて販売する予定になっていた。
本作品の個人的な印象としては、かなりボリューム感があり、質も凝り過ぎに思えるほど充実している。当調査員は詳しくないので判断がつかないが、鉄道ファンの期待に応える細かな描写がされているようである。難点は話題が真面目で堅いだけに、萌えコンテンツらしい設定の都合の良さ、緩さが目立ってしまう点で、極端な少女描写と合わせ、そのあたりで好みが分かれそうだ。
公式HP
http://www.lose.jp/maitetsu/